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ぉゔぇ記

好きなことを好きなように書きます。

大前元紀選手の負傷の話

 6月8日に行われた町田ゼルビア清水エスパルスの試合で、清水エスパルス大前元紀選手が町田の井上選手のチャージにより、肋骨を4本も折る大怪我を負ってしまった。その場面を何度も見ていたが、僕の目には『非常に不運な事故』に見えたので、その旨Twitterでつぶやいた。そうしたところ、わりと賛否両論になったので、個人的にしっかり自分の考えをブログにまとめておきたいと思った。

 まずこの一連のプレーを分割してみると、次の5つがあるように思われる。

1,井上選手と大前選手の衝突
2,井上選手の落下(その際に井上選手の肘や腕が大前選手の腹部に直撃したこと)
3,大前選手の負傷(大前選手という現時点でのJ2得点王の負傷、またその負傷が非常に重傷であること)
4,主審の反則基準(結局その場面では町田のファールであるが、井上選手にカードは出ていないこと)
5,試合後の対応(井上選手からの謝罪の有無について)

 まずこの中で僕は3については語るべきではないと考えている。というのは、誰が負傷したかや負傷が重いものであったか軽いもので済んだかということは、プレーやファールそのものには関係がないことだからだ。わりと僕の意見に反対だった方は「肋骨4本も折る大怪我ですよ!」という意見もあったし、好調だっただけに「大前が…」という清水サポの話はわかるのだが、では仮に同じプレーの結果、かすり傷や打撲で済んでいたらそのプレーの是非は問われなかったということなのだろうか。あるいは大前じゃなくて別の選手だったら問題なかったのだろうか。それは違うのではないだろうかと思う。あくまで大前選手が重い負傷となってしまったのは「結果」であり、今回の論点は結果ではなく過程にあると考えている。

 なので残りの4つのことについてそれぞれ考えていこうと思う。

 1の場面。町田のリ・ハンジェ選手がコーナーキックPA外に蹴ったところ、それに反応した大前選手と井上選手が衝突した。この時に井上選手は正面から、大前選手はボールを見ながら半身の状態で空中で衝突しているのだが、その際に井上選手が膝を曲げてジャンプしており、双方ともそれなりのスピードだったために、衝撃は大きかったと考えられる。
 
まずこの時に井上選手が故意に膝を曲げて跳んだのか、という点について考えなければならないと思うが、それは99.9%NOであろう。なぜなら前方に走りながら高くジャンプをするとき、普通の場合では着地を考えて膝は曲がるものであり(自分でちょっと跳んでみればわかる、膝を曲げずに思い切り跳ぶことは不可能だ)、井上選手の場合もそうなっていると考えられる。
 
では次にこの場面がサッカーではまれに見るような酷いラフプレーなのか、ということになる。僕はこれもNOだと思う。国際大会でも、日ごろ見ているJ1J2でも、このような空中衝突はよく起こっている。(例えば今EUROの開幕戦でも、フランスの選手がこのようにジャンプをしている場面があり、ルーマニアの選手がやや痛んだ場面がある)3試合あれば確実に1回2回は目にする様なプレーだろうと思う。それは当日の実況解説を聞いていてもわかることで、大前選手が負傷している時に「頭なのか、あるいはお腹辺りに落ちましたからね」などと話している。要は負傷は落ちた場面だろうと見ているわけで、跳んだ場面は言及がない。

清水サポ的にはここがまったく納得行かないようで、「井上選手も半身になれば」「後ろ向きで体をひねれば」などという話が出てきているが、そもそも場面が町田のCKで、PA内にボールを供給しようという意図が井上選手にあったと考えられる以上、クリアなどと同等のプレーをする選択肢は井上選手にはなかったと思う。
 
ただし、もちろん井上選手側(というか町田ゼルビア側)に問題はあり、それは大前選手よりボールに対する反応が遅れた(あるいは井上選手により近いところにボールを蹴ることができなかった)という点は問題であろう。ただその時に、井上選手も大前選手も「取れる、いける!」と判断してヘディングに行っているであろうことは理解されなければならないと思う。大前選手の反応もボールを蹴った直後に動き出しており、非常に速かった。両者の反応速度とプレー意図の違いにより、衝突が発生してしまった場面であろうと考える。


 次に2の場面だ。しかし、この場面については僕は故意であるとも思えないし、どうにかすれば避けられた場面だとも思えない。空中で衝突した場面で両者とも仰向けに落ちており、体をコントロール出来る状態には決してなかったからだ。ただし、結果的にこの場面が今回の負傷に最も大きく影響している非常な危険な場面であることは残念ながら間違いないと考える。1の場面から2の状態になってしまったこと、こればかりはどうしようもなかったが、非常に残念な場面ということになるだろう。


 この1,2のことを受けて、4の話に移る。審判の判定基準についてだ。この試合の主審はベンジャミン・ウィリアムスさんで、オーストラリアの国際審判員である。前回の2014W杯にも派遣されており、オーストラリア国内、あるいはAFCではかなり評価の高い審判員なのだろう。今回問題となっている場面では、彼は井上選手のファールを取ったのみで、カードは提示していないが、この試合で彼は4枚のイエローカードを出している。なのでそれぞれの4枚のカードの場面を見返してみた。

 1枚目…前半10分 町田ゼルビア 金聖基選手へのイエローカードPA内で清水白崎選手を後ろから手で倒したファールに対して提示。
 2枚目…前半35分 清水エスパルス 大前元紀選手へのイエローカード。CKのポジション取りで大前選手と町田重松選手の小競り合いがあり、それに対して主審が2人を呼び寄せ注意し、握手をしたあと、大前選手が重松選手を裏拳で叩いたことに対して提示。(反スポーツ行為?)
 3枚目…後半2分 町田ゼルビア カルフィン・ヨンアピン選手へのイエローカード。清水チョンテセ選手が裏に抜けようとしたところを手で倒したファールに対して提示。
 4枚目…後半16分 清水エスパルス チョン・テセ選手へのイエローカード。町田谷澤選手がボールを受けたところに後ろからスライディングタックルで倒したファールに対して提示。

 もちろん審判が常に正しいとは言わないが、これらの場面でイエローカードを出し、今回問題となっている場面では出さなかったということは、主審の判断基準的には「ファールではあるが、そこまで危険なものには見えなかった」ということになるのではないだろうか。また、少なくともウィリアムス主審は、大前選手と井上選手の衝突を最も近い位置で見ていた人であることも申し添えておきたい。(衝突場面のVTRに頭が映っているくらい近くにいる)

 
 そして最後の5の話だ。僕が知る限り、6月11日現在までに町田ゼルビアというクラブ、あるいは井上選手から、大前選手への謝罪、大前選手を見舞いに行ったという情報は見当たらない。もちろん、そのような情報は出さなくても良いことではあるのだが、海外のリーグの試合などでも事故的に大きな負傷が怒ってしまった場合、すぐにそのようなアナウンスであったり、病院へ見舞いに行ったなどという記事がメディアに出てくることは多い。試合中の事故であったとはいえ、そのような情報が見当たらないのは率直に言って残念だ。是非、何らかの形で発信してもらえればと思う。


 最後に、このような負傷が発生しないように出来ることはないのか、という話になると思う。しかし実際問題としては「事故的な負傷」は残念ながら防ぐことは不可能だろうと思う。今回の話で言えば、最も事故を防げる可能性があった場面は1の場面となる。つまりそもそも大前選手と井上選手が衝突しなければ、負傷の原因となる落下もなかったからだ。しかし、先程も述べたように、あのような衝突につながりかねない競り合いは、数試合あれば1度はあるような場面である。 (それは審判員がカードを提示しないことからも証明できるだろう。まれに見る危険なプレーならば即カードなのだから)ではそのような数試合に1度はあるような場面を起こらないようにする(ルール的にラフプレーとして禁止する?)ことが現実的だろうか、となると難しいのではないだろうか。

 もう一つこのような負傷を防げる方法としては、「判断と技術を向上させる」ことだろう。この点については、今回の加害者となった町田ゼルビア、井上選手に限らず全てのチーム、選手が目指していくべきことだろう。とはいえ、当然目指して行っても上手下手の差は出てくるものであり、その辺りが相手の選手と比べて足りないから試合に出られない、などというのは当然非現実的なことだ。
 
 大前選手の早い快復を祈りたい。