ぉゔぇ記

好きなことを好きなように書きます。

俺達の砂川誠

 砂川誠FC岐阜に移籍した。
期限付き移籍となってはいるが、様々なコメントを見る限り、もう選手として返ってくる可能性は限りなく小さいのだろうな、と思った。

 プロスポーツ選手は言うまでもなく過酷な職業だ。1年単位で活躍を判断され、いっとき活躍した選手であっても、数年後の保証はない。そんな中で、18年半プレーをして生き残ってきた彼だから、現行の体制になってから丸1年間の不遇には、怪我をしたとはいえ、大きなストレスがあったに違いない。それに、残りの現役サッカー選手としての人生も決して長くはないだろう。だから、移籍はわかる。

 わかるけど、どうしようもなく寂しく、悲しい。だって12年半だ。来年の契約もわからないプロスポーツの時間軸では、12年半という時間は永遠のようなものだ。いつしか僕らは彼を「俺達の砂川誠」と呼び、スタメンであっても、サブであっても、劣勢であっても、J2でも、J1でも、「砂さんが助けてくれる」「なんとかしてくれ砂川」と期待を押し付けた。うまくいかない時がなかったわけではないけれど、彼は期待に応えつづけた。

 この数年は特にその傾向が強かったかもしれない。そして、砂川誠という選手はそんなサポーターの期待を一身に受け止めて、コンサドーレのためにプレーし続けてきた。だから股関節や足首の怪我で離脱していても、僕たちは砂さんが帰ってきたらの話をしていたし、楽しみにしていた。誰も忘れてなどいなかった。年齢も気にしてはいなかった。コンサドーレが辛い状況のとき、この10年間、助けてくれたのはいつも砂さんだったから。いつも俺たちの砂川誠でありつづけてくれたから。

 もしかしたらJ1あたりのチームでは、こんな重責を担うのは日本代表に選ばれるような選手なのかもしれない。サッカーファンなら誰もが知っているような、そんな選手の役目なんだろうと思う。でもその役割の選手が砂さんだったからこそ、コンサドーレコンサドーレたりえたのではないだろうか。誰よりも長く一緒にチームを形作ってきた、そういう意味でコンサドーレ札幌は「砂川誠のチーム」だったのではないか。

 そんな砂さんの移籍を受けて、僕らも変わらなくてはいけない。チームも変わらなくてはいけない。僕らが無責任に期待を押し付ける俺たちの砂川誠はもういない。もう、彼はなんとかしてはくれないのだ。今まで彼に押し付けていた期待を、チーム全体に、チームの選手みんなに、少しずつ分配しなくちゃいけない。砂さんが背負ってきたものを次のだれか一人に押し付けたら、重すぎてつぶれてしまうから。選手はひとりひとり、次は自分が背負って立つと思ってほしい。そうじゃないと今より強くならないから。

 札幌の砂川誠時代は、残念ながら終幕だ。次の時代をすぐはじめなくちゃ。

変わる素晴らしさ。変わらない美しさ。ここにはこの2つがあると思います。必死で生き残るための戦いがあり、それを見守る優しさがあるから。曽田雄志 引退の挨拶 より 

 12年半、本当にありがとうございました。砂さんがいて、砂さんに頼れて、本当に幸せでした。今後どうなるかはわからないけれど、まずは岐阜で大活躍してください。あの神業的な切り返しからのクロスを見せてください。そしていつでも帰ってきてください。だって僕らはピンチの連続のクラブだから。コンサドーレのピンチには、俺達の砂川誠が、必ず助けてくれるでしょう?そう信じて待ってます。さようなら。