ぉゔぇ記

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 Football LABのチームデータから読みとく2016コンサドーレ札幌への課題

『この記事はアドベントカレンダー2015向けの記事です』 
 今年もコンサドーレは昇格せず、プレーオフにも進出せず、またブログのネタに困ってしまった次第なのである。去年は都倉のベストゴールがあったので、なんかゴール集みたいなまとめを書いたのだが、今年はそんなネタすらないのである。困ったな、ああ困ったな、困ったな。
 困ったときは定量的分析だって大学時代の友人が言ってたのだ。なんで、コンサドーレのチームデータを紐解いてみることにした。今回のデータは全てFootball LABを参考にさせて頂いた。

 まずは今年のチームデータを参照してみると、

  • 1試合平均攻撃回数:131.4(J2全22チーム中21位、以下同)
  • 1試合平均シュート数:14.3(4位)
  • チャンス構築率:10.9%(3位)
  • 1試合平均ゴール:1.1(7位)
  • シュート成功率:7.8%(11位)

-

  • 1試合平均被攻撃回数:131.8(3位)
  • 1試合平均被シュート数:11.6(5位)
  • 被チャンス構築率:8.8%(7位)
  • 1試合平均被ゴール:1.0(8位)
  • シュート被成功率:8.6%(13位)

と、なっている。データの定義に関してはこちらを参照されたい。
 これらのデータから想定できる今年の札幌の攻撃は「1回の攻撃が長く続き、シュート数も多いほうだが、その割には得点数が少ない(シュート成功率が低い)」札幌の守備は「攻撃を受ける回数も、比較的シュートを打たれている本数も少ないが、その割には失点数が多い」ということになり、全体を通してみると「攻守ともに効率が悪い」ということになる。

 では2014年と比べ、あるいは2013年と比べて有意な差はあるのだろうか、と思って調べてみると、これがなかなか大きく違った。
例えば去年は攻撃回数が141.2、シュート数は13.6となっており、明らかに今年よりもボールの行き来が激しいサッカーをしていることが読み取れるし、2013年は、攻撃回数は144.7、平均ゴール数が1.4、シュート成功率は9.5%と、奪ったり奪われたりが多いものの、攻撃をゴールにつなげる率は高かったことが読み取れる。それは得点数でも明らかで、2013年は60得点とれている。一方2014、2015はそれぞれ48得点と47得点と大幅減である。

 一方で守備面で言えば、2014年は被攻撃回数が141.1、被シュート数が13.9。2013年は被攻撃回数が144.7、被シュート数が13.2と、両年とも明らかに今年より数値が高く、データだけを信用するなら、今年のほうが全体的なピンチそのものの回数は少なかったことが読み取れる。ただし、喫した失点は2013年が49、2014年が44、今年が43と、それほど変わりがない。

 他チームと比べた時にはどうだろうか。例えば今シーズンJ2で優勝した大宮アルディージャは、比較的コンサドーレと似た傾向の数値が出ている部分が多いことがわかった。

  • 1試合平均攻撃回数:128.6(22位、札幌21位)
  • 1試合平均シュート数:15.1(2位、札幌4位)
  • チャンス構築率:11.8%(2位、札幌3位)

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  • 1試合平均被攻撃回数:126.7(1位、札幌3位)
  • 1試合平均被シュート数:12.4(8位、札幌5位)
  • 被チャンス構築率:9.8%(15位、札幌7位)

札幌と比較した場合には、攻撃では大宮のほうが全体的に良い数値で、しかし一方、シュートを打たれている本数は大宮のほうが多いくらいである。しかし、次に挙げる数値は大きく異なる。

  • 1試合平均ゴール:1.7(1位、札幌7位)
  • シュート成功率:11.3%(1位、札幌11位)

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  • 1試合平均被ゴール:0.8(1位、札幌8位)
  • シュート被成功率:6.7%(4位、札幌13位)

 つまり今年の大宮は「札幌同様、1回の攻撃が長く続き、シュート数も多かった」が、「札幌とは異なりシュートがよく決まり、得点数は圧倒的に多い」。また、「札幌同様攻撃を受ける回数は少ない」が「札幌とは異なりシュートまで持っていかれる確率は比較的高い、しかし水際で非常によく止めている」ということがわかった。

 ということは、札幌は今シーズンの大宮のようになることが出来る道筋には乗っているが、足りないのは「シュートの質」「シュートストップの質」ということがいえるのではと思った。しかし、質と言っても、果たして単純に「シュートが上手い下手」「キーパーの上手い下手」という問題なのだろうか?ということを考えてみたい。

 そのようなデータはあるだろうか、ということで先ほどのページを確認してみると、下の方にStatsがある。より詳細な各プレーのデータだ。この中で先ほどのデータになかったもの、そして比較的目を引く数字は、「タックル」「インターセプト」の数がリーグの中で高い数値を誇っていることと、また「間接フリーキック」「スローイン」の数がリーグの中で極めて少ない方に入ることだろうか。先ほど、今年の札幌は「攻撃回数が少ない=1回の攻撃が長い」というデータがあったが、ボールをピッチの外に出すことも出させることも少なく、自陣でキレイに追い込んでタックルやインターセプトでボールを奪っている、などというイメージが見えてくる。たしかに稲本や河合がタックルでボールを奪ったり、宮澤や福森が前に出てインターセプトする場面は多かったように感じた。

 そしてもうひとつ気になる数値は、「ボール支配率(49.6%)」である。これだけ「1回の攻撃が比較的長い」「ボールを上手く奪っている」というデータがあるにも関わらず、ボール支配率は50%を割っているということは、相手にボールを回されているということだ。ちなみに先ほど比較してみた大宮は、ボール支配率や30mライン侵入の率がリーグ1位であり、同じ「攻撃回数が少ないチーム」でも、大宮は「自分たちがボールを回すことによって攻撃回数が少ない」、札幌は「相手に回されることによって攻撃回数が少ない(ただし奪ったあとのマイボールの時間も比較的長い)」ということになる。また、ボールは回されているものの、相手陣内で回されていて、自陣ではしっかりタックル、インターセプトができている(つまり前線からの守備はまあまあ上手くいっている)ということでもあるかもしれない。

 しかしそれだけならば、札幌はあまりボールを回せなかったが、守備は素晴らしかったというそれだけで終わってしまう。現実として守備の指標で、シュート被成功率は13位なのだから、その考えはおかしいだろう。そう考えた時に一つの仮説が生まれる。

「2015札幌は、前線からの守備は効果的で相手陣でボールを回させることが多く、うまいこと中盤で奪える(そしてその回数もリーグの中では多い方だ)が、そうならなかった時に高い確率で決定的なピンチを招いていたのではないか」


この仮説を確かめるために、チーム別の失点パターンのデータを参照した。これによれば今シーズンの失点は

  • PK…1失点
  • セットプレー直接…2失点
  • セットプレーから5アクション以内…11失点
  • クロスから…9失点
  • ルーパスから…2失点
  • ショートパスから…6失点
  • ドリブルから…7失点
  • こぼれ球から…2失点
  • その他(オウンゴールとか)…2失点

ということだ。

 実はこの中で、他チームと比べて有意に多い失点パターンが有り、それは「ドリブルから」の失点である。なんとなく今年の失点イメージとしては、クロスで競り負けたイメージが強かったので意外だったのだが、クロスからの失点は少なくはないが圧倒的に多いとはいえないらしい。例えば福岡もクロスから9失点しているし、大宮はクロスから7失点、千葉はクロスから8失点している。決して札幌が飛び抜けて多いとはいえない。(ただしこの数シーズンと比べると、今年はクロスからの失点がやや多くなっており、奈良が抜けた影響はデータとして見られるのは事実だ)

 一方ドリブルからの7失点は、リーグワーストの数値である。札幌より20点近く多く失点しているチームですら、4失点とかなのだ。ということは、前の仮説に付け加えて考えると、「札幌の守備は、密集して相手のパスを遮ることはよく出来ているが、一旦そこを抜けだされてしまった時に、ドリブルからきれいシュートを決められるくらいスペースが空いていた」もしくは「守備陣がドリブルしている相手を止められないまま競り負けてしまった」ということになるだろうか。必然的に、「打たれたシュートの本数の割に失点が多い」ということになるだろう。つまり失点に関してはGKの質の問題ではないが、チームとして全体の守備組織がややギャンブル的で、中盤で奪えないと失点に繋がりやすいと言えるだろうか。

 同じく、得点パターンについても調べてみた。すると、2015札幌の得点は

  • PK…5得点
  • セットプレー直接…1得点
  • セットプレーから5アクション以内…7得点
  • クロスから…11得点
  • ルーパスから…2得点
  • ショートパスから…8得点
  • ロングパスから…4得点
  • ドリブルから…3得点
  • こぼれ球から…5得点
  • その他…1得点

ということであった。
 こちらも割と課題ははっきりとしており、PKを除くセットプレーで8得点というのは、リーグワースト2位なのだ(ちなみにワーストは東京V)。セットプレーから15〜20得点するチームが多い中で、札幌の8は明らかに少ないと言える。そもそもコーナーキック直接フリーキックの回数も、リーグ15位、16位とかなり少ない。2013年はセットプレーで20得点、2014年も18得点を決めているので、このレベルに戻せれば競った試合などで勝ち星を拾うことがもっと出来たはずだ。小野や福森といういいプレースキッカーがいた割に得点が非常に少ないということは、セットプレー回数の問題と、もう一つは中の選手の動きの問題が大きいのではないか。

 あえてもう一つあげるなら、スルーパスからの得点数は少ないように感じる。「相手にボールを回されている」というデータが先ほどあったが、それならば相手の守備にはもっとスキができているはずだ。奪った後にスルーパスで裏に抜けるような選手がいなかった、というところだろうか。攻撃に関しては、選手の質というか、プレー選択の問題があると感じる。相手DFラインの裏に抜けるようなプレーであったり、セットプレーの攻撃の時のバリエーションであったりは、もっともっと高めていく必要があるだろうし、そのあたりを補強で付け加えていかなければならないだろう。

というわけで、Football LABのデータを使ってみた2015年札幌の結論と来季の昇格に向けての課題は

  • 『目指している方向は悪くはなかったが、相手陣内でのボール支配率をより高めたり、オフ・ザ・ボールの動きでもっと相手の裏を狙う必要がある』
  • 『セットプレー時の中の動きをもっと練習して、セットプレーからの得点を倍増させなければならないし、もっとセットプレーの回数を増やすことも大事』
  • 『相手にフリーでドリブルをさせないような守備、またドリブラーに対する1対1の対応をもっと向上させる必要がある』
  • 『前に出てインターセプトを狙っていく場面と、しっかりリスクマネジメントを取る場面とのバランスがとれるといい』

ということだ!来年がどんなチームになるか、楽しみにして見てみよう。



P.S. このブログを書いている途中で、砂川誠選手が今シーズン限りでの引退を決めたという情報を見ました。最後を札幌で終えさせてあげられなかったこと、本当に残念に思いますが、引退は砂さんが決めたこと。本当にありがとうございました。そして現役生活おつかれさまでした。