一週間経ってもまだ思い出して感動できる。32節札幌-京都戦のセサル・ラモス主審のレフェリングのストレスのなさにである。それは札幌が気持ちよく勝てた試合だというのも多少はあるのかもしれないが、しかしこの数シーズンこんなに「気持ちの良い審判だったな」と思ったことはない。これほど試合中一度も「ちゃんと見ろよ審判、どこに目をつけてんだよ」と思わなかったこともない。なので具体的にどのあたりが「良かった」と思ったのか、ブログにしてみようと思った。なお自分はサッカーはよく見るが審判ライセンスがあるわけでもなく、特別審判やルールについて詳しいわけではないのでご了承願いたい。
・0分9秒~
この時点できちんとしている審判だな、と思った。キックオフ後、コンサドーレがロングボールを蹴り、サイドを割って京都のスローインである。京都の右サイドバック福田選手が、ボールの出た位置のかなり前からスローインしようとしたのだが、主審はそれを少し戻させた。ポイントは「最初の笛」「少し」というところで、今日はちゃんと見てますよ、でも別に神経質にきっちりというわけでもないですよ、という両方の姿勢を見せたように感じられた点にある。これ以降、過度な位置のごまかしはなかったはずだ。
・22分56秒~、50分50秒~
DAZNだとこの2場面がとても分かりやすく映っていた。セサル主審は選手になぜファウルだったのか、なぜファウルじゃなかったのか、ということを身振りしながらきちんと説明をしている印象だった。前者の場面では、その1分ほど前に鈴木武蔵が京都DF2人に挟まれて競り合った場面でなぜファウルじゃなかったのかを聞き、それに対して答えているのだろうと思う。後者の場面では、鈴木武蔵がロングボールで競り合った際に相手に腰を突き出したのがファウルだよ、と言っているのがわかる。こうだったからファウルじゃないよ(ファウルだよ)としっかり基準があるので、選手側も納得するのだろう。このほかにも、先制点につながったコーナーになる場面では、京都の選手が「当たっていない」アピールをしたものの、「あなたが足でこうやってボールを蹴ったんだよ」という風に説明しているのが上からでもわかった。
・83分16秒~
ファウルの基準がはっきりしているので、どっちだろうか?という接触があった場面でもその基準に満たない場合はどんどん流してプレーを続けさせる傾向が強かった。そしてその際は必ずプレーオンのジェスチャー(あるいは立ち上がりなさいというジェスチャー)をはっきりとしていた。選手としてはそれは取ってほしい、みたいな場面もあるのかもしれないが、「ファウルしてでも」という意図がない五分五分のプレーに対しては流すので、試合全体がスムーズに進み、かつ分かりやすかった。逆にファウルギリギリでもいいから止めてやる、というプレーに対しては似たような接触でもしっかりファウルを取っており、きちんと見たうえではあるが、全般的に選手のプレー意図をしっかりと汲んでいたように感じた。
まとめると、
1、最初の指導で選手に安心感を与える
2、頻繁なコミュニケーションにより選手との意思疎通やファウル基準の確認を行う
3、神経質になりすぎず、選手のプレー意図を尊重した笛
ということだと思う。
このセサル・ラモス主審がカタールW杯の準決勝で笛を吹いた主審だということを試合後に知った。申し訳ないが日ごろ見ているJリーグの審判員とは素人目でも大きく感じるほどの差があった。それこそイニエスタを初めてJリーグの試合で見たときに上手さの違いに驚いたものだが、それと同じような衝撃を審判のレフェリングで受けるとは思わなかった。どのようにしたらJリーグの主審の多くが彼のようになれるのかはわからないが、Jリーグにこのようなレベルの高い審判員が増えてほしいと思うし、選手のレベルアップ以上に審判員のレベルアップが必要なのではないかなあと感じている。